新しく農業を始める人にとって「露地栽培」「施設園芸」どちらを選択するかで、初期費用や作業の手間ひまなどが大きく変わってくる。
日本で主流なのは、野外の畑で農作物を栽培する露地栽培だ。ビニールハウスなどの設備を使って環境をコントロールする施設園芸と比べて最初の設備投資を抑えられるため、初心者にとってハードルが低い。太陽や雨などの自然の恵みをそのまま生かせるため、その土地の気候や土壌の特色に合わせた農作物を栽培できる。
最初に露地栽培で始めれば、その後のカスタムの自由度も高い。農業に慣れてきて通年で安定した栽培をしたいと思えば、コストさえかければ施設園芸にすぐ切り替えられる。また、農地の上空に太陽光パネルを置き、農作物と再生可能エネルギーを同時に生産するソーラーシェアリングによる農地活用もしやすい。
露地栽培のメリット&デメリット
経営の負担が軽くなる!
露地栽培のメリットは、何といっても初期投資コストの低さとすぐに始められる手軽さだ。大きな設備が必要なく、農機も施設園芸と比べて大きさや形状の制約が少なく廉価なものを選びやすい。そのため新規就農者の多くが露地栽培から始める。
施設園芸より農地を広く使える分、より大規模な栽培が可能だ。大型農機を使い、出荷調整を機械化することで作業効率化につながりコストダウンしやすいため、経営面でも負担を軽くできる。
栽培可能な品目も多い。キャベツ、大根、白菜、レタスなど寒さに強く霜の被害を受けにくいものが中心になるが、それ以外にも様々な野菜にチャレンジできる。
デメリットとしては、自然環境の影響をもろに受けてしまうこと。害獣被害はもちろん、低温、猛暑、長雨など悪天候が続けば、病害虫の発生などで大幅に収量が減るリスクがある。それだけ施設園芸よりも栽培管理は難しくなる。
施設園芸のメリット&デメリット
費用はかかるが所得増!
施設園芸のメリットは、ガラス室やビニールハウスを利用して農作物を栽培するため、通年で天候や外気温の影響を減らして比較的安定した生産、収穫ができることだ。複数の装置を情報通信技術(ICT)で制御できるようにすれば、施設内の環境を遠隔でコントロールすることも可能になる。
露地栽培と比べて品質と生産量が安定し、出荷時期もコントロールしやすい。そのため、施設園芸は露地栽培と比べて約3倍の所得が見込めるという(農林水産省調べ)。
だが、露地栽培と比べてデメリットもある。初期の設備投資、その後の減価償却、設備の維持、燃料などが必要な分コストが高いことだ。設備が置ける農地は限られるため、大規模化しにくい。台風などの災害で設備が損壊すれば、露地栽培よりも復旧に時間と費用を要する点も注意しておきたい。
悩んだら作りたい農作物で選ぼう
大根と白菜は露地栽培向け、いちごときゅうりは施設園芸向けといったように、農作物の品目により適した栽培方法が異なる。そのため、まず自分が育てたいと思っている農作物について、どの栽培方法が適しているかしっかり下調べするのが重要だ。どちらを選ぶにしても、それをサポートするアイテムは豊富に流通している。本展示会でもそれらを紹介しており、各企業のブースにある取り扱い製品を参考にしていただければ幸いだ。