私たち人間が感じる光を「可視光」と呼び、その波長は概ね400〜700nm。この可視光より短い波長域に「紫外光「があり、とくに近紫外光のなかでもUV-A(315~400nm)は地表に到達する紫外光のほとんどを占めている。UV-B(280〜315nm)はいわゆる日焼けを引き起こすとされ、実証試験圃場のイチゴでも防御関連遺伝子の発現誘導が確認されている。
UV-B ライトの具体的な効果
なぜUV-B照射によって害虫を抑制できるのか。たとえばハダニでは、DNAの損傷により遺伝子が正常に機能しなくなることが理由。一方で、損傷を正常な状態に戻すメカニズム(光回復)も存在するため、照度と時間の積によってUV-B照射の効果は決まる。
では、効果的な照射方法とは。実験によれば、UV-B 照射終了から可視光照射までの暗黒時間が長くなると光回復は低下し、4時間後でほぼ皆無に。この結果から、UV-B照射を深夜の3時間 に行い、日の出まで3~4時間の暗黒の時間ができるようにすると、卵のふ化率を低く抑えられることがわかった。
効果的な2つの“合わせ技”
ハダニ抑制には光反射シートで葉裏にUV-Bを照射することが重要。これにより、うどんこ病の抑制効果も向上する。また、天敵のカブリダニを組み合わせる手法も有効だ。そんなUV-B照射との“合わせ技”について見ていこう。
●光反射シート
光反射シートでUV-Bを乱反射させることで、葉裏へUV-Bを効果的に当てることができる。光反射シートや白マルチによってはUV-Bライトの反射が期待できない場合があるため、選ぶ際は事前にメーカーへ確認しよう。
●カブリダニ
カブリダニもUV-Bの影響を受けるものの悪影響は低く、強い光や有害な紫外光を速やかに避ける性質がある。そんなカブリダニによる防除効果を上げるには、あらかじめハダニの密度を下げておくことが重要。同時に、カブリダニに悪影響のある薬剤は使用しないよう注意したい。
栽培方法別の基本的な体系
《土耕栽培》
株が混み合う春以降はUV-Bライトが当たりにくくなるため、殺虫剤やカブリダニを併用したい。うどんこ病が懸念される秋と春は薬剤防除との併用を推奨。
出典:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業研究センター「紫外光照射を基幹としたイチゴの病害虫防除マニュアル~技術編~」
《高設栽培》
株とUV-Bライトとの距離が近く照射ムラができやすいためカブリダニとの併用を推奨。さらに、葉裏にUV-Bライトが当たるよう光反射シートの設置を工夫する。
出典:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業研究センター「紫外光照射を基幹としたイチゴの病害虫防除マニュアル~技術編~」
収量・品質にも好影響が!
最後に、生産者が最も気になる“収量・品質への影響”はどうなのか。品種によってデータは若干異なるものの『章姫』では病害虫の抑制により収量が増え、さらに糖度が高くなる傾向が確認された。また『紅ほっぺ』でも同様に照射量に比例して糖度が向上。すべてのイチゴ生産者にとって、UV-Bライトは見過ごすことのできない技術といえるだろう。
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