“5つのポイント”から考える「イチゴの販売・マーケティング戦略!」

イチゴは、国内でも海外でも人気がある果実的野菜である。インバウンド需要も含めて、イチゴ狩りなどの体験型販売も盛況だ。イチゴ生産者が考えるべき販売戦略について様々な視点で解説する。

作付面積が大幅に減少しても
生産効率の高いイチゴ


農水省の作物統計調査によれば、2020年の国内のイチゴの作付面積は5,020ha、出荷量は146,800tになっている。
昭和48年からの推移をみると、14,000haあった作付面積は減少の一途をたどり、60%以上減少した。
また、出荷量は平成の始めに20万トンまで拡大し、その後は減少が続き、直近の10年では15万トン前後で推移している。

作付面積が大幅に減少しているにもかかわらず、出荷量が大きく減少していない理由は、生産効率が非常に高くなったことにある。
1haあたりの生産量は昭和48年では約13tだったが、2020年では32tまで伸びている。同じ面積でも、生産量が2.5倍なったのだ。

こういった背景がある中で、生産者間、産地間の競争に勝ち乗っていくためにも、生産効率を高める技術、食味を高める技術など、生産技術のアンテナは常に張っておく必要がある。

楽しむために食べるイチゴ
嗜好性が強い理由とは


イチゴは、分類上、果実ではなく野菜となりますが、販売店や消費者の扱いは果物であり、嗜好性が強い農産物であると言える。
つまりは「健康のために食べる」というよりも「楽しむために食べる」という意味合いが強いのだ。品目としてのイチゴの特徴として、いくつか例をあげる。

■品種が非常に多く、300種類以上が登録されている
世界の国々と比較しても、日本におけるイチゴの品種数はトップクラスと言われている。それだけ、全国に多くの産地と品種が存在し、品種開発が行われている。

■食べるにあたって、皮を剥いたり、種を取り除いたりする必要がない
現在、皮を剥かないと食べられない果物の需要は減少の一途たどっている。
皮を剥くのも、種を取るのも面倒で、できるだけ簡単に、お菓子のように食べられる果物が消費者の支持を集めている現在、イチゴは人気商品となっている。

■ハウスでの生産、高設栽培技術などが確立している
土耕、土耕ハウス、高設ハウス栽培まで、多くの生産技術が確立し、安定した品質と反収確保が可能になっている。ハウス栽培で手で収穫できるため、収穫体験=いちご狩りのようなアプローチも実施しやすい。

■柔らかく、水分が多いため、輸送耐性が低い(衝撃や温度変化に弱い)
柔らかい外皮であるため、衝撃が加わった場合などに痛みやすく、かんきつ類やリンゴなどと比較して輸送耐性は低い。

特徴を踏まえたイチゴの販売
マーケティングの方向性とは


では、今後、イチゴの生産者や販売事業者などは、上記の特徴を踏まえて、どのような戦略を考えれば良いのだろうか。
ここでは、5つのポイントを紹介する。

▷ブランディングも含めて、差別化をしっかり行う
すでに栽培技術が確立しており、全国に多くの産地が存在する。

その中で生産者として戦っていくためには、ブランディングも含めて「差別化」にこだわる必要がある。特に消費者への直接販売を行う場合や、ギフトとして販売する場合などは差別化が極めて重要だ。GRA社の「ミガキイチゴ」などは代表的な取り組み事例と言えるだろう。

差別化の方向性としては、品種(白イチゴや珍しい品種など)、栽培方法(こだわりの肥料など)、品質(糖度や酸度、見た目など)があげられる。とりわけ、イチゴは味の違いが分かりやすく、嗜好性が高い農産物であるため、糖度や酸度だけではなく、栽培方法や品種なども「味」に関する内容を訴求することで差別化していくことが効果的だと言える。

▷用途を考えた生産と販売方法を考える
イチゴは、自宅で食べる日常用から、贈答・ギフト用、ケーキなどに使われる加工用、さらにはイチゴ狩りでの販売まで、多くの用途向けに販売することができる。当然ながら、用途によって品種や出荷基準(選果の品質)だけではなく、パッケージから訴求内容まで変える必要がある。

例えば、すごく柔らかく痛みやすいが甘味が非常に強い品種などは、イチゴ狩りに使えば品種の珍しさや特徴で「美味しいけど傷みやすいから出回らない幻の〇〇」といった形で差別できるうえ、その場で食べることから、輸送耐性が低くても問題にはならないだろう。

▷6次産業化も含めたアプローチが有効
差別化と保存性を考えた場合、イチゴを使った加工品づくり、イチゴ狩りも含めた体験型でのサービス展開といった6次産業化も有効だ。

加工品としてはジャムや菓子といった王道の展開から、最近では冷凍して刻み、かき氷のようにして食べるような新たな商品まで生まれている。体験型では、コロナ禍でイチゴ狩りは厳しい状況が続いたが、需要は回復していくだろう。

▷輸出も販路の一つと考える
世界的にみても、日本のイチゴは品種の豊富さと品質から、競争力のある農産物であると言える。そのため、輸出においてもメインの品目の一つとして大きく販売額が伸びている。

輸送資材や栽培方法の工夫で、輸送耐性の確保と品質維持が可能となる。国内だけではなく、海外に向けた販売アプローチも重要だ。

▷体験型の場合、「プロセスと人」に注意する
イチゴ狩りや、イチゴを使ったカフェ展開などを代表とする「体験型」での販売を行っていく場合、商品を販売するときに考慮するべき「製品」、「価格」、「販売場所」、「販促方法」といったマーケティング戦術に加えて、「プロセス」と「サービスを提供する人」を考慮することが重要だ。

サービスを提供するための段取り、消費者が来店してから帰るまでにどういった体験を提供するのかを、一連の流れで設計する必要がある。

また、消費者とコンタクトする従業員やスタッフといった「人」の育成、接客方法なども、顧客の支持を得るための重要な要素となる。

以上、5つのポイント紹介した。
イチゴは国内でも海外でも有望な品目なので、積極的に生産者として攻めていこう。

筆者プロフィール
公益財団法人 流通経済研究所
主席研究員 折笠俊輔氏


小売業の購買履歴データ分析、農産物の流通・マーケティング、地域ブランド、買物困難者対策、地域流通、食を通じた地域活性化といった領域を中心に、理論と現場の両方の視点から研究活動・コンサルティングに従事。日本農業経営大学校 非常勤講師(マーケティング・営業戦略)。

※本文はAGRI JOURNALより引用、加筆修正を行っております。

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