日本全国の農地で最近、台風による被害が増えている。野菜などが強風で吹き飛ばされたり、浸水したりして売り物にならなくなったという被害農家の声が、メディアを通じて度々聞かれる。
台風被害には、主に強風による風害、強風によって海水が飛散しておこる塩害、大雨や洪水による農地への冠水による湿害の3つがある。これらの台風被害を最小限に食い止めるためには、施設などの倒壊を防ぐための準備や農作物にネットなどの被覆をする事前対策をしておきたい。
台風通過後には、農作物の葉や茎に付着した塩を洗い流したり、草勢を回復させるために液肥を葉面散布するといった事後対策も必要だ。もちろん対策には限界があるが、台風シーズンを乗り切り、1つでも多くの農作物を消費者に届けられるようにするためにも基本的な知識を身に付けておこう。
台風の事前対策
場所選びと補強が必須!
農作物の作付やビニールハウスなどの建設は、台風の被害を受けにくい場所を選ぼう。過去の台風被害の履歴、自然災害の可能性を示した地図(ハザードマップ)などであらかじめ風害や浸水の可能性を調べられる。
水はけが悪い所は畝を高く立て、浸水しないようにするのが大切だ。排水溝の泥やごみをしっかり取り除いて農地の排水性を確保しておこう。防風ネットで農地の周りを囲って風よけする際は、頑丈な支柱を地中深く埋めるようにする。
特にビニールハウスは風の影響を受けやすいため、あらかじめビニールを外し、支柱に筋交いを入れたり、ひもで補強したりといった対策が必要だ。
農作物については、種類で対策方法が分かれる。草丈が高いものは太い支柱を立て、ひもなどでしっかり固定して倒れないようにする。草丈が低いものは不織布や防虫ネットなどをかける。ブロッコリーなどは強風で曲がったり折れたりするため、株元にしっかり土を寄せておこう。
台風の事後対策
水で流れた土や肥料を戻す!
台風通過後は、すぐに農地の排水をして農作物が水に浸かっている時間を減らす。土の表面が固まっていれば、通気性を確保するために周囲の表土を浅く耕そう。土が水で流れて農作物の根が露出していれば、新たに土を入れる。逆に土が流入して株元が埋まっていれば、その土を取り除く。
農作物については、茎や葉に泥がついていればすぐに水で洗い流そう。ひとたび冠水して農作物が傷つくと傷口から病原菌が感染する恐れがあるため、殺菌剤を散布したり、被害を受けた農作物の株や葉を取り除くといった細かいケアが必要だ。もし農作物がしおれている場合は、寒冷紗という布やべたがけ資材を使って遮光し、植物中の水が大気中に放出される蒸散という減少を抑える。
降水量が多いと肥料が流れて減っていることがあるので、速効性の肥料を追加したり、薄い液肥を葉面に散布するのが効果的だ。これらの対策をしても回復が見込めないときは、種子や苗の植え替えや播き直しをしよう。
被害を受けたら栽培計画見直しも
できる限りの事前対策を行っても、何が起こるか分からないのが自然災害というものだ。台風に限らず、最近の日本は全国で様々な災害が起こっており避けては通れない。農作物の被害状況を確認し、今後の栽培計画を検討することも事後対策として重要だ。