自身の土地に適した肥料を正しく使おう
今さら言うまでもないが、農業生産において肥料は必需品だ。農地は自然界とは異なる。定期的に作物として土地が持つ栄養を取り出すのが農業生産なのだから、肥料を与えなければ、やがて植物の成長に欠かせない栄養が不足してしまう。そこで投入するのが肥料である。日本において肥料は、肥料取締法において定義されているのはご存知だと思う。
植物に必要な栄養素は一般的には16種類であるとされている。中でも特に大量に必要であるとされるのが、肥料の三要素として知られているのが窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のNPKであり、植物の必要度に応じて、二次要素、微量要素と呼ばれる。三要素NPKのうちの二つ以上を含むのが複合肥料であり、現在の主流となっている。作物や土壌の性質、それに地域に応じて、多様な複合肥料が市販されている。一方、それぞれの栄養素を単体で供給するのが単肥であり、必要に応じて施肥される。
肥料を原料から分類すると、鉱物質を原料とした化学肥料と、動植物質を原料とした有機肥料とに分けることができる。一般的に、効率的であり即効性に優れ、安価なのは化学肥料である。有機肥料は一度無機物質に分解されてから植物に吸収されるため即効性には劣るが、そのため窒素過剰になり難く、微生物を含めた土壌環境を整える役割、それに環境に与える負荷が低いというメリットもある。
肥料は植物を成長させるために与えるのだから、肥料選びは圃場の性質を知っていなくてはできない。勘と経験に頼り過ぎず、自身の土壌の性質を把握するため、土壌分析を行うと良いだろう。圃場に不足する成分、過剰な成分を把握できるはずだ。それに応じて適した肥料を適量撒くことで、求める収量を得ながらも、肥料費と労働コストを同時に低減できる。
肥料の選び方
1. 複合肥料と単肥とがある
現在広く使われているのは複合肥料である。作物、土壌の性質、それに地域に応じて、必要な要素が満遍なく含まれた複合肥料が多数発売されている。自身に合致した複合肥料を選べば、まず間違いない。複合肥料には一つの肥料に多くの成分が含まれていることから、施肥や管理をしやすいのもメリットだ。単肥は複合肥料で不足しがちな成分を補うのに適している一方、単肥を組み合わせて施肥しようとすると、作業も管理も大変だ。複合肥料をベースに単肥で補うのが一般的だ。
2.化学肥料と有機肥料
圧倒的に広く使われているのは化学肥料(特に複合肥料)である。自身が育てている作物、土壌、地域と合致した複合肥料を選べば、まず大きな間違いはない。一方で、有機肥料は遅効性であるため窒素過剰になり難い。これは収量のみならず味覚にも良い意味で影響する場合がある。また土壌環境を整える役割、と環境負荷の低減を含めれば、マーケティングとしても利用価値がある。特に中小規模生産者は、上手く併用すると良いだろう。
3. 微量要素にも気を配ろう
「複合肥料を適量施肥しているのに何故か元気がない……」という場合に疑うべきは、病害虫だけではない。微量要素の欠乏が原因の場合もある。微量要素は植物にとっての必要量こそ極わずかだが、植物の生育には絶対に欠かせない必須元素だ。土壌診断の結果を今一度見直し、不足が疑われる微量要素を与えよう。微量要素の複合肥料も市販されていて便利だ。
本記事では、肥料の重要性と選び方の要点を紹介した。それ以外にも、コストや入手容易性が重要であることは言うまでもない。また施肥や管理といった付帯作業についても購入前に検討すべきだ。肥料は安定した収量を得るための必需品であるが、あらためて業務や経費を含めて肥料を見直してみると良いだろう。本記事を参考にして、是非、自身に最適な肥料を選んで欲しい。